「笑ゥせぇるすまん」の弟「喪黒福次郎」とは一体何者!?

漫画「笑ゥせぇるすまん」のスピンオフ
「喪黒福次郎の仕事」は、おふくろの味である。

喪黒福次郎

藤子不二雄A 本名:安孫子素雄は藤子不二雄として、
藤本弘とコンビを組んでいたが、
87年コンビ解消後「藤子不二雄A」として活動する。

「オバケのQ太郎」(共作)以降の不二雄Aは、
「魔太郎がくる!!」「ブラック商会変奇郎」「笑ゥせぇるすまん」で、
その独特の作風を定着させた。

少年チャンピオンに連載されていた「魔太郎がくる!!」は、
(主人公は少年 浦見魔太郎)

当時、古賀新一の「エコエコアザラク」と並び、
オカルトブームの代表的作品となっている。

その、おどろおどろした画風は決まり文句
「ウラミハラサデオクベキカ」とともに、
筆者の脳裏に鮮明に刻まれている。

魔太郎

そして、89年「笑ゥせぇるすまん」アニメ化。
「オォーーーーホッホッホッ!」という大平透の雄叫びが、
記憶に新しい。

コンビ解消後、青年向け漫画も描ける事を実証した、
藤子のエポック的作品である。

そのスピンオフ作品が「喪黒福次郎の仕事」である。

福次郎とは「笑ゥせぇるすまん」で有名な喪黒福造の弟であり、
彼は、困ったお客様を次々救っていくという設定になっている。

97~98年にかけ発表され全部で12話。

福造と違い彼の名文句は「天知る 地知る 己知る」である。
しかし、ゆめゆめ、これを「笑ゥせぇるすまん」と比べてはいけない

作風を料理に例えると、魔太郎、喪黒福造の時は黒胡椒。
それに比べて「喪黒福次郎」は、
みりん、或いは和風出汁に摩り替えられているのだ

晴天の霹靂!

納得がいかない

「笑ゥせぇるすまん」で癖になった「えぐ味」は、
まろやかな、おふくろの味へと転身している。

うーん物足りない。

筆者は何度となく「喪黒福次郎の仕事」12編を味わってみた
これは、ビッグコミック連載の西岸良平「三丁目の夕日」に通ずる、
「おふくろの味」なのだという結論に至った。

というのも、福次郎は全く仕事をしない回もあることに気づく

失敗に終わっている話もあるのだ。

人の世は酸いも甘いも様々だという事だろう。
「人間たまには失敗するさ」という人間讃歌である。
「笑ゥせぇるすまん」のニヒリズムは、そこにはない。

弟、喪黒福次郎は藤子不二雄Aの分身なのだろうか・・・

喪黒福次郎 マンガ

これが「笑ゥせぇるすまん」以降、青年誌に移行した、
藤子漫画の人間観察の妙なのだ。

あの松任谷由実は、歌詞を創作する際に喫茶店などで、
他の客の盗み聞きをしているそうだが、
電車、呑み屋、雀荘と福次郎(藤子自身といっていいかもしれない)の語りも饒舌だ。

何か、兄「福造」が犯してきた悪の所業(福次郎自身が、そう語る)を、
回収作業でもするかのように日常にドラマを見出だし仕事していく。

特別にドラマティックではないが、
良心の呵責に耐えうる限りの様々な事件が起きる

「喪黒福次郎の仕事」最終話などは、その真骨頂だ。

漫画家である「久留味つくる」はグルメでもあり、
藤子と同じ、手塚治虫崇拝者でもある。

久留味は雑誌廃刊により漫画家の道を断たれてしまう。
しかし、福次郎の知人のグルメ老人「味斎」を紹介され、
料理人の道を歩きはじめる。

これだけの話なのだが、ここに、
藤子不二雄自身の持つ希望的観測を筆者は診てとった。

そこには、何かおふくろの味的な安定感を筆者は感じたのである。
この話のモデル「久留味つくる」は、
藤子の知人漫画家がモデルになっているのではないだろうか

筆者はそう勘繰ってみたのだが。

喪黒福次郎、その仕事や良し!

「完璧な人間なぞ、この世にはいないよ」と語るように、
藤子自身でもある福次郎は仕事を続ける。

「喪黒福次郎の仕事」は「笑ゥせぇるすまん」の藤子的免罪符である

そして「天知る地知る己知る」と、やさしく諭していくのである。



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